成功のカギは「段階的」「対話」デンマークが“ナンバー制度”に成功した理由(2023年6月9日)

ANNニュース速報

トラブルがあとを絶たない日本のマイナンバーですが、北欧のデンマークでは、同じようにナンバーを利用した制度で、様々なサービスを受けることができます。2つの国の違いは一体どこにあるのでしょうか。

人魚姫など、アンデルセン童話で有名なデンマークは、デジタル政府ランキングで2年連続1位。世界一のデジタル大国です。その秘密が、日本のマイナンバーにあたる個人番号『CPRナンバー』と紐づけられた、ログインID『MitID』です。

その活用範囲は広く、例えば図書館では、スマホにMitIDを表示するだけで誰でも借りられます。

市民:「(Q.MitIDを持っていますか)はい。15歳になったらもらえます。(Q.どういう場面で使いますか)フェスに行く時、MitIDで入るとか。学校でも、パソコンにログインする時とか」

デンマークに住む『LivinginDenmark』の樋口博史さんは、不安以上に利便性が高いと話します。

樋口博史さん:「デンマークの生活では、MitIDがないと生活が不自由で、必要不可欠なものになっています。毎日使うものではないけども、銀行・証券会社の口座を作る時に、住所を書く代わりにMitIDでログインすることで、住所・本人確認をスムーズにできる」

デジタル化が進んだデンマークでは、市役所も日本とは大きく違います。

醍醐穣記者:「コペンハーゲンの市役所です。こちらではパスポートや免許の申請ができますが、日本にあるような、書類を書く記帳台はありません。そして、職員の方が勤務をするカウンターにも、書類はほとんど見当たりません」

パスポートなど役所で物を受け取る際には、MitIDでログインする無人のロッカーから受け取れます。

コペンハーゲン市職員、カリナ・ルドゥビイグセンさん:「職員が手入力をしないので、ミスも起きません。私たちも楽になりました。なにより市民が楽になりました」

市民:「結婚する時もMitIDで署名します。(Q.日本では市役所に赴いて)ペンで署名するんですか?日本は私たちよりずっと進んでいるのかと思いました」

デジタル化にあたって、デンマークでは、日本のようなアクシデントや反発はなかったといいます。その理由とは…。

デジタル化戦略に携わる、KMD社デジタル化事業責任者、ピーター・J・グロストル氏:「先にCPR番号ができたことで、様々なシステムがCPRありきで構築できて、とても幸運でした。CPRの導入時、入力すべき情報が少なく、そのため問題も起きなかった。システムに入力しなくてはならない問題は起きなかった。例えば名前や生年月日、住所の情報は、様々な誤解を生む」

デンマーク版マイナンバーの導入は、約半世紀前の1968年。日本では、郵便番号が導入された年です。日本では、これまで分散で管理されてきた個人情報に、後からマイナンバーを結び付ける形がとられているのに対し、デンマークでは、行政内のシステムとして、CPRナンバーありきで構築を進めました。

そして、2000年代に入ると、CPRナンバーを行政や民間のサービスに活用し始めましたが、当初は批判の声も上がったといいます。

ピーター・J・グロストル氏:「政府が特定の分野で電子化に着手する時、最初は国民を誘い込む難しさに直面する。政府が市民に『何が必要ですか』と、対話を始めるまで時間を要したのも事実です」

数年のスパンで段階的に進めたデンマーク。利便性を重視して、誰もが使う公共のサービスから始めていき、具体的で明確な目標を提示していったことが成功の秘訣だったといいます。

ピーター・J・グロストル氏:「デジタル化するにあたり、使い方が分からない人は、図書館や役所の職員を訪ねて使い方を教わることができた。振り返ると、当時は大きなトラブルも覚悟していたが、実際に構築したら、うまくいった」

■ポイントは“政府への信頼”
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デンマークの“マイナンバー”が成功している理由として、長い時間をかけて段階的にできることを広げていったことが挙げられます。

もう1つ、成功のポイントがあります。デンマークでは、2014年と2020年に、大規模な個人情報の流出が起きています。その時の政府の対応について、デンマーク在住の樋口さんはこう話します。

樋口博史さん:「ただ経緯を説明するだけでなく、なぜ流出が起きたのか、今後どうしていくのか、分析をきちんとしたうえで我々に伝えてくれる。再発防止をこうするんだと考えている印象がある。国民の中でも、そうしてくれるなら安心だという納得感が高いような気がする」

大越健介キャスター:「日本では、かつて『国民総背番号制』とうい言い方に反発の声が強く、マイナンバー制度の導入に時間がかかりました。デンマークと一律に比較することはできませんが“国民への向き合い方”という面では、非常に参考になると思います。少なくとも、問題をできるだけ小さく見せようとしたり、ミスがあっても、できるだけ『私の責任じゃありません』と振る舞っていると、どこの国でも信頼は生まれません」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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