不法移民が社会問題となっているドイツで、国境管理がさらに強化されることになった。この事態に近隣諸国が非難の声を上げるなど、揺れるEUの現状に迫る。
■国境管理強化する2つの理由
ドイツとフランスの国境に設置された検問所。フランスからの車を止めたのは、ドイツの国境警察だ。
所変わって、ドイツとオランダの国境でも、オランダからのバスの乗客のパスポートをドイツの警察官がチェックする様子が伺える。
ドイツ連邦警察 ディーター・ハット報道官
「不法移民の疑いがある車両を対象としています」
ドイツは16日から、フランスなど5カ国との国境で管理を厳格化し、陸路でやって来る入国者への検問を開始した。不法移民を入国させないのが目的だ。
実は、ドイツはすでに去年までに4カ国の国境で検問を行っていて、今回で隣接するすべての国との国境で警備強化となったのだ。
ドイツの地元住民
「とても良いことだと思います。国境地帯は特に犯罪に悩まされていて、誰でも自分の好きなように入国できるのは正しいことではありません」
そもそもドイツは、ヨーロッパ内の移動を自由にするための「シェンゲン協定」の加盟国で、本来は国境での検査は原則必要ないのだが、国境管理強化には2つの理由がある。
1つ目は、先月にドイツ西部で起こった、3人が犠牲となった殺人事件だ。容疑者は難民申請のためにドイツにやって来たシリア人で不法滞在だったという。
そして、もう1つの理由が、移民排斥などを掲げる極右政党「ドイツのための選択肢」の躍進だ。
■難民への新たな対応策に指摘
ドイツ国内は今、どういう状況なのか?番組では、16日までドイツに滞在していた、ドイツ公共放送プロデューサーのマライ・メントラインさんに話を聞いた。
マライさん
「移民・難民を何とかしないといけないというような声が多い。(ショルツ政権は)何とか対応しないといけないというプレッシャーがあるんですね。それがあって今回の警備強化につながったんじゃないかなと思います。来年の秋はドイツの総選挙があるんですね。ショルツ政権は今のうちに何とか雰囲気をガラッと変えないと、『次はもうないんじゃないかな』と言われているんです」
今、ドイツでは難民に対して、新たな対応策が指摘されているという。
マライさん
「国境付近にキャンプみたいなのを作って、入ってきた難民をそのキャンプにみんな収容して、そこで難民申請を行って、そのプロセスもスピーディーにしよう、そういうアイデアもある。(ただ)難民申請者を大きなキャンプに集めるっていうのが、ちょっと見た目的にもドイツの歴史を考えても、あまりよろしくないんじゃないかなと私は個人的には思っているので、ここらへんは結構ネックですね」
■EUにおける移民問題の現状
ドイツが国境警備を強化したことでEUが揺れている。
ドイツの国境警備強化、すでに実施されていたのが青で示したポーランド、チェコ、オーストリア、スイスの4カ国だ。
そして今回、16日からは赤で表示したフランス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、デンマークが追加され、国境を接する全9カ国となった。
これまでドイツは多くの移民・難民を受け入れてきた。
去年、EU加盟国に難民申請した人のうち、ドイツがおよそ33万人でEU全体の31.4%。スペインがおよそ16万人、フランスのおよそ14万人と続いているが、ドイツが圧倒的に多いことが分かる。これは2015年、当時のメルケル首相が移民の受け入れを表明したことが大きな理由となっている。
EUには「ダブリン規則」というものがあって、「移民・難民申請は最初に到着したEU加盟国で処理されることを義務付ける」というものだが、当時のメルケル首相は、このダブリン規則を棚上げして受け入れを行ってきた。しかし、今回はダブリン規則を適用し、移民を送り返しているという。
ダブリン規則で重要なキーワードが、「最初に到着した国」という部分だ。
EUの国境管理機関によると、不法な移民・難民の多くはアフリカや地中海東部、バルカン地方からだという。そうなると、EUの境界線となっている国々が必然的に移民が「最初に到着した国」になりやすいわけだ。
今回のドイツの対応にはポーランド、ギリシャ、そしてオーストリアなどが反発しているということだ。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2024年9月18日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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