一生に一度しか産卵しないキングサーモンの卵を、ニジマスに繰り返し産ませることに東京海洋大学の研究グループが成功した。一体、どういう仕組みなのか、研究者に聞いた。
■キングサーモン…「月に6日ぐらい」
白いご飯の上に敷き詰められる本マス。その上に盛り付けられるネギトロ、本マグロ。そして、脂がのったキングサーモン。さらに、さらに!アマエビ、ウニ、イクラも盛られた海鮮丼が1880円!
「武蔵境 おさかな家さん 南口店」は、キングサーモンを目当てに訪れる客が多いという。
従業員
「(Q.キングサーモンは毎日店に並ぶ?)毎日はないですけど、時々あるかな」
「(Q.1カ月でどれくらい?)6日ぐらい」
実はキングサーモンは、他のサーモンに比べて養殖が難しい。この店では、養殖に成功しているニュージーランドから、仕入れている。
従業員
「キングサーモンをいつも置きたいですけど、なかなか高級な魚なので」
■キングサーモンを作り出す実験とは?
キングサーモンは養殖が難しく、アメリカ西海岸では絶滅の危機に瀕しているが、今回ある実験で、キングサーモンを作り出すことに東京海洋大学が成功した。
東京海洋大学 吉崎悟朗教授
「毎年、毎年、頑張ってくれという気分で、魚たちを見守っていたという。そういう状況でしたね」
実はキングサーモンは、一度産卵をすると死んでしまう魚なのだ。そこで吉崎教授らが着目したのは、ニジマスだ。
吉崎教授
「ニジマスが本当に例外として、何度も何度も子ども産めると」
実験では、卵(らん)や精子を作ることができないようにしたニジマスに、キングサーモンの生殖幹細胞を移植。すると、成熟したニジマスは卵や精子を生産した。
このキングサーモンの細胞を持つニジマス同士で人工授精させたところ、生まれてきたのはキングサーモンと完全に同じ個体だったという。
吉崎教授
「我々が期待していることが本当に起きた。これはもう、DNAレベルで完全にキングサーモンですね」
キングサーモンは成熟するのに3年から7年かかるが、ニジマスは1年から2年で成熟する。
キングサーモンの細胞を持ったニジマスは、一度の産卵で死ぬことはなく、その後何度もキングサーモンを産んだ。
吉崎教授
「副産物的な部分として、一回産卵のサケの養殖が容易になるとか、絶滅しそうな魚たちを何とか守りたい、守る技術を構築したいということで、(この実験系が)食料供給、あるいは生物保全という両者の出口から見ても意味がある」
■アジ科やサバ科など…他の魚にも適用可能
研究チームによると、今回の技術は他の魚にも適用することが可能だという。
吉崎教授によりますと、アジ科やサバ科、コイ科などでもそれぞれ遺伝的に近い仲間同士だと適用できることを確認していて、クサフグという小型のフグに、高級魚で知られる大型のトラフグの卵を産ませる実証実験にも成功しているという。
さらに研究チームは、乱獲などで絶滅の恐れが高まっているクロマグロへの適用も目指していて、サバ科の中でも近い種の魚を使ってチャレンジしているそうだ。
「養殖の効率化」が期待される今回の研究だが、他にも期待していることがあるという。
吉崎教授は、「今回の研究成果と『細胞を長期保存する技術』を組み合わせることで、個体の復元が可能になる」と話していて、人間のエゴなどが招いた地球温暖化や乱獲などで、絶滅危機にある魚を守るための活用も進めていければと話してる。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2024年5月27日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
コメント