看板メニューは「60円ラーメン」。激安で人気の食堂が1月31日に閉店します。店主を取材すると、日本一の安さにこだわってきた訳が見えてきました。
■築77年の建物 「日本一安い」食堂
新宿駅から2キロほどの場所にある酒場。文字がたくさん書かれていて、インパクトのある外観となっています。そして入り口には「日本一安い!!」と書かれています。
建物は壁が黒く変色し、年季が入っています。1階の外壁はかなりひび割れが起きています。
入り口に掲げられた看板には、「定食酒場食堂」の文字があります。築77年の建物で営業しています。
古いのは外観だけではありません。
「定食酒場食堂」店主 天野雅博さん(56)
「そこね、寒いんですよね。なんか(ドアが)開いちゃう」
客
「ゆがんじゃってる?」
建物が傾いているため、入り口のドアには自然とすき間が空いてしまいます。
■看板メニューは…60円の醤油ラーメン!
それでも店内はにぎわいが絶えません。その訳は…。
最近通い始めた客(4回目)
「止まらない。おいしい」
男性客が食べていたのは、看板メニューの「醤油ラーメン」。値段は、なんと60円です。他にも「288円定食」「80円ナポリタン」など、破格の安さの料理が並びます。
最近通い始めた客(4回目)
「安くておいしくて量があるという、夢のような飲食店」
男性は1カ月前に初めて店を訪れ、すでに4度目の来店。毎回、違う料理を食べています。
この日は、ラーメンと玉子焼きを注文しました。
天野さん
「ありがとうございます。120円と60円で180円です」
「ラーメンと玉子焼き食べて、180円で帰れるというあの喜び。だから俺もできるのよ」
こう話すのは、店主の天野さん。安さには強いこだわりがありました。
天野さん
「(Q.安いラーメンを提供し続けたのは?)自分の意地でしょうね。『日本一安い食堂』に。腹が減っていては笑えないと思うし、(客が)おなかいっぱいになって帰ってくれれば」
「おなかが満たされてこそ、人は笑顔になれる」と語る天野さんは養護施設の出身。家庭の事情でご飯を1人で食べなくてはならない子どもに無料で食事を提供する「子ども食堂」にも取り組んできました。
■食堂に来ることがモチベーション 常連客「居場所」
天野さん
「また失敗したの?ほら、真っ白~、真っ白」
客
「成功だから」
安さを維持するため、天野さんがほぼ1人で店を切り盛り。ビールなど酒は、すべてセルフサービスです。
多くの客が店にひかれる理由は、安さだけではありません。
天野さん
「うちに来るお客さん、皆すぐ友達みたいな感じ」
4年間毎日通う 鈴木さん
「居場所ですよね、ここでしか会えないので。仕事ばかりだったらとうの昔に病んでいる。ここに来られていたから、頑張ってこられたというのはある」
気づけば、食堂に来ることが日々のモチベーションになっていたという鈴木さん。それだけに店での思い出は数え切れません。
鈴木さん
「これ、卵100個使った卵のケーキ、玉子焼きのケーキ。私の誕生日のお祝いをしていただいた」
■老朽化で建物の取り壊し…1月31日に閉店
しかし、そんな安らぎの場となっている“人情食堂”も31日が最後です。
天野さん
「まさか老朽化で取り壊しというのは片隅にもなかったから。僕が借りている以上ずっと続くと思っていたので」
老朽化が進み、建物の取り壊しが決まったため、閉店することになりました。
現在、移転先を探していますが、目ぼしい所はまだ見つかっていません。
天野さん
「今は本当に複雑な気持ち、なんとも言えない。今それ(閉店への思い)言っちゃうと、自分が崩れちゃうような気がして。考えないようにしてる」
「(Q.客の居場所がなくなっちゃう?)うーん、ノーコメントで。ノーコメントでそこは。今まだ語らず。長くなるだろうね、考えたくない。以上、終了」
そう話すと、調理場へと戻ってしまいました。
4年ぶりに来た客
「寂しいというか、またどこかでやってほしいなと思う」
客も寂しさを隠しきれない様子。それでも、天野さんはこんな力強い言葉も残していました。
天野さん
「またやりますよ、間違いなく、また皆さんがびっくりするようなシステムでやりますよ、きっと」
(「グッド!モーニング」2024年1月31日放送分より)
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