人材流出による“賃上げ倒産”急増も?「AI搭載タクシー」で売上アップと人材確保へ(2023年2月12日)

賃上げの波は中小企業にも広がるのでしょうか。
各社の動向に注目が集まる一方、賃上げできずに人材が流出して倒産に追い込まれるケースが増えています。
人手の確保に奔走する企業を取材しました。

▽“賃上げの壁”突破のカギは「技術力」
中小企業が集まる展示会。経営者から聞こえてきたのは…
(出展企業)「社員の給料もあげていかないとっていうのがなかなか難しいなって思ってる」
「社員さんのモチベーションにもつながる部分ではあるので、(給料を)あげたいという気持ちはもちろんあるんですけど…」
賃上げの大きな壁となっているのが”価格転嫁”です。先月実施された調査によると、コスト増加による価格転嫁ができていないと答えた企業は、3割以上に及んでいます。
一方で賃上げができている会社も…
(関西電子 進士国広 社長)「ラー油ですね。これをたらします。そしてナノファイバーをつけました。見事に全部取れます。」
吸着性が非常に高い、ナノファイバー。髪の毛の100分の1ほどの極細繊維です。会社があるのは、「ものづくりのまち」として知られる東京・大田区。
(関西電子 近藤正博さん)「ナノファイバーの溶融紡糸装置です。」
こちらでは、ナノファイバーを大量生産する機械をつくっています。従業員は8名。ナノファイバーと共に売り上げを支えているのが…
(関西電子 進士国広 社長)「半導体製造装置用に使われている外国からの輸入品でして」
この輸入製品が、去年の歴史的な円安で会社の利益に大きな影響を与えたといいます。
(関西電子 進士国広 社長)「もう利益が飛んじゃうんですよ。うちの扱ってる輸入品はものによって同じ会社のものでも(値段が)50%上がったものもある。」
そこで、取引先に価格転嫁を申し出ると、100%値上げに応じてくれたそうです。その理由が…
(関西電子 進士国広 社長)「修理するのには高度な能力と経験が必要なんですが、私どもの会社はすぐ売って、それで終わりということじゃなくて、壊れた時には敏速に修理を対応できる」
この会社でしかできない“独自のメンテナンス技術”が、価格転嫁につながったのです。結果、4月には1万円程度の賃上げを予定しているという事です。
(関西電子 進士国広 社長)「よそには負けない、私どもの会社にしかできないこと、そこに存在価値があると思います。できるだけ利益が上がれば(従業員に)還元して、より仕事しやすいような環境を作っていきたいと思っています。」

▽未経験でも安定収入へ“AI搭載タクシー”
賃上げは中小企業の経営を大きく左右します。中には賃上げできず、人材が流出して倒産する会社も出ています。人手不足が原因による倒産は、直近の2年間で増加傾向にあります。長年、人手不足に悩まされているのが、タクシー業界です。
(つばめグループ 天野朝之 代表)「もともとタクシー運転手は、50代以降の人がたくさん働いていた。多様な社員が働けるようにしていかないと人手不足は解消しない」
全国のタクシー運転手の数は、10年前から13万人以上も減少。平均年齢も60.7歳と高齢化が進む一方です。新たな人材確保の為、この会社で始めたのが…
(つばめネット開発センター 手嶋博之 部長)「AI需要予測システムと呼んでいまして、AIに学習させて、30分後の未来の(乗客の)需要の予測ですね。それを表示してあるというシステムですね」
“AIの活用”です。過去10年間、1200台分のタクシーの乗降データや現在の空車状況をAIに学習させ、数字や色で必要なタクシーの数などをナビ上に表示してくれます。
(つばめネット開発センター 手嶋博之 部長)「ブルー・黒は、(客を拾える)予測の数より空車の方が多い場合。黄色・赤は空車の数よりも(客を拾える)予想の数の方が多いと。その通りに走れば、そこそこの売り上げがたつ」
これまで運転手の経験や勘に頼りがちだったのを、未経験でも安定した収入が得られる事を目指しています。
(つばめネット開発センター 手嶋博之 部長)「ベテランと変わらない。もしかしたらベテラン以上に売り上げが上がる」
一人当たりの売り上げは、およそ15%上がったといいます。
働き方改革にも力を入れています。2カ月前入社した田谷さんが選んだのは…
(つばめグループ 研修生 田谷哲志さん)「今は週4日出て2日休みっていうのをやっています」
“週休3日”も選べる新しい働き方。去年10月からスタートした制度で月に10日休むことができます。休日は増えても、AIを使う事で30万円前後の最低月給が確保できるそうです。
(つばめグループ 研修生 田谷哲志さん)「若い子とか増えるんじゃないですかね。5日出て、2日休みだと体が持たないと僕は思うんで。」
(つばめグループ 天野朝之 代表)「女性・若手、あとは国籍も含めて、多様な層が働けるようにしていくのがお客様にとって一番良いのではないかと考えています」

▽“賃上げ不可欠”人手不足のホテル業界
水際対策の緩和などで需要が回復しているホテル業界でも人手不足は深刻です。
(クインテッサホテル東京羽田 堀嘉行 総支配人代理)「コロナ禍で需要が冷え込んだことにより、多くのホテルが休業に追い込まれ優秀な人材がホテル業界から流出してしまいました」
ホテル業界では、コロナの間だけで人手不足の割合がおよそ2倍に広がったとの調査結果もあり、優秀な人材獲得の為、賃上げは不可欠だというのです。そこで、このホテルでは1月から20~30代の若手社員を中心に2割から3割の大幅な賃上げを行いました。
(コアグローバルマネジメント 星有加さん)「周りも(賃金が)上がっているのでモチベーションアップした人たちが増えた」
賃上げのもとになったのが…
Q. 今からどちらへ?
(クインテッサホテル東京羽田 堀嘉行 総支配人代理)「今からWEBで会議を行います」
リモート会議が終わると、ジャケットを脱いでなぜかエプロン姿に…
「お食事がちゃんとあるかチェックをしているんですけども」
こちらでは複数の仕事を同時にこなす“マルチタスク制”を採用。少しずつ効果も出てきています。
「人件費が約2割から3割程ほど、削減できました。結果的に質の良い仕事を効率的にできるようになりました」
業務を効率化できたことで、新たな人材も3名雇用でき、人手不足も解消したそうです。さらに、顧客満足度を高めるため、8千冊の漫画が読み放題のスペースや24時間無料で食事ができるサービスも始めました。
(クインテッサホテル東京羽田 堀嘉行 総支配人代理)「若いお客様、もしくは女性のお客様も増えてきております。さらに良いサービスを提供できるようにと思っております」

2月12日『サンデーステーション』より
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp