戦闘機が緊急発進 NATO演習中に・・・取材から見えた“ロシアの隣国”リトアニアの危機感(2022年6月8日)

ウクライナ侵攻を続けるロシア軍に対し、NATO(北大西洋条約機構)は警戒を強めていて、ロシアと国境を接する国の上空や海上で連日、合同軍事演習を行っています。

演習には、NATO加盟申請中のフィンランドとスウェーデンも参加します。両国が参加しての演習は、これまでも行われてきました。ただ、ロシアがウクライナに侵攻した今、その意味合いは大きくなりました。

アメリカ軍、ミリー統合参謀本部議長:「スウェーデン・フィンランド軍とは何年も前から連携しており、両軍がNATOに加盟すれば大きな戦力になる。共通の理念とルールに基づく国際秩序、大国が代償を払わぬまま、小国を侵略できないようにするためだ」

バルト3国の一つ、リトアニアのシャウレイ空軍基地では7日、NATO加盟国など17カ国から約3000人の兵士、50の航空機が参加した大規模な演習が行われていました。しかし、リトアニアは戦闘機を持っておらず、駐留するのはスペインとチェコの空軍です。

もともとバルト3国は、ソ連崩壊後の混乱で、航空戦力を自分たちで賄うことができませんでした。「空軍基地」ではあるものの、リトアニアが持っているのは、輸送機など攻撃能力を持たないものです。

同盟国に自国の空の安全を大きく依存するリトアニア。それを象徴する場面が、この演習中に見られました。

大平一郎支局長:「演習の最中ですが、訓練ではないスクランブル発進が行われています。何らかの正体不明機が感知されたということで、パイロットがやってきました。チェコ空軍の2機の戦闘機が、これからスクランブル発進します」

こうしたことは、決して珍しいことではないといいます。

チェコ空軍、ダネック司令官:「(Q.ロシア軍機と空中で遭遇したことは?)もちろんあります。(Q.よくあること?)よくあることです。(Q.どういった状況で?)幸い、相手は国境沿いを飛行中で、侵犯行為はありませんでした。今回の任務の準備段階から状況は悪化しています」

リトアニア空軍、スロビカス指揮官:「『もっと機体を』と常に思っています。戦闘機とパイロットは軍の予算には高すぎます。今の情勢下では我々の戦力は不十分なので、NATOの支援は重要です」

リトアニアは、西にロシアの飛び地カリーニングラード。東にはロシアがウクライナ侵攻の拠点にしたベラルーシがあり、東西から攻め込まれ、挟み撃ちにあいかねない場所です。

ロシアの影を常に感じてきたリトアニア。西のカリーニングラードとの国境には、2017年に柵が建てられました。

リトアニア、ミシュナス内相(当時):「私たちにはより頑丈なEU(ヨーロッパ連合)の国境が必要です」

柵のすぐ向こう側では、ウクライナへの侵攻開始後もロシア軍による訓練が行われてきました。リトアニアにとって、ウクライナ情勢は“明日は我が身”です。

リトアニア、ナウセーダ大統領:「プーチンの計画はウクライナにとどまらない。欧州・大西洋の安全保障構造の破壊もその一つだ。ロシアの脅威はこの先ずっと消えないと認識せねばならない。『欧州・大西洋全域に対する重大かつ長期的な脅威』と指定すべきだ」

◆NATOの軍事演習を取材した大平一郎支局長に聞きます。

(Q.これまでにないほどの大規模演習を取材してどう感じましたか?)

演習中に実際のスクランブル発進が起きたという事実が印象に残りました。我々はドキッとしましたが、NATO側はその可能性を想定していたといいます。それほどスクランブル発進は頻発していたからです。

もう一つ印象的だったのは、軍の取材としては異例とも言えるほど、NATOが取材に協力的だったことです。ほとんどNGはなく「何か他に撮りたいものはないか」と向こうから聞いてくるほどでした。もちろん、メディアを通じてロシアをけん制したいという思惑はあったと思います。

もう一つは、NATOの身内、特にバルト3国に対して、結束をアピールする思惑もあったと考えられます。バルト3国は、さらなる軍備増強などをNATOに求めていて、ロシアへの強硬姿勢を強めています。

ただ、ドイツやフランスなどNATOの中には慎重論も根強く、意見の違いも目立ってきました。こういったなかで演習が行われていることからも、NATOはバルト3国を含めてしっかり守るんだとアピールしたかったのではないでしょうか。

(Q.ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まって、リトアニアでは危機感が高まっていますか?)

リトアニアに来て分かりましたが、北海道よりも小さい国土ということもあって、ロシアの存在感は非常に大きく感じます。ロシアの飛び地カリーニングラードとの国境まで、私がいる場所から約150キロ。ベラルーシとの国境までは約30キロと、近い距離にあります。

街中の至る所には、ウクライナとの連帯を示すサインや国旗が掲げられています。リトアニアの方々は「ウクライナで起きていることは他人事ではない」「明日は我が身だ」と感じているからではないでしょうか。

◆防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。

(Q.NATOの大規模軍事演習は、ロシア側からはどう見えていますか?)

今回、加盟申請中のフィンランド・スウェーデンが、NATOに加盟したかのように軍事演習をしているので、ロシア側は“NATO加盟後”の軍事演習と認識したのではないでしょうか。

(Q.ロシアの西側は海の出口が少なく、バルト海はNATO加盟国に囲まれつつあります。バルト海での演習はロシアを刺激しませんか?)

そう思います。特にスウェーデンがNATOに加盟すると、ロシアの飛び地カリーニングラードが事実上、NATO加盟国に包囲された形になります。バルト海にはロシアのバルチック艦隊の拠点があり、バルト海での軍事行動が制限されることになると思います。

メドベージェフ前首相も、将来的にカリーニングラードへ核兵器を配備することを示唆する発言をしていて、バルト海をめぐる軍事的な緊張が高まっていく可能性があります。

ロシア機が領空接近飛行してきたことも、ロシアが刺激を受けた反応の現れだと思います。

(Q.ロシアのラブロフ外相は8日、トルコのチャブシオール外相と会談し、封鎖された黒海からのウクライナ穀物輸出について「黒海に機雷を設置したウクライナ側の問題だ。ロシアは解決に向けて協力する」とこれまでの主張を繰り返しました。この会談で、ウクライナ穀物輸出問題は前に進みますか?)

今回の会談で、ウクライナ側は「意思決定はすべての関係国が参加して行われる必要がある」と警戒感を示しています。トルコが表向きには協力する姿勢を見せていますが、ロシアが機雷の除去を持ち出していて、最終的にウクライナは受け入れない可能性が高いのではないでしょうか。そうなると、穀物問題も戦争と同じように長期化する可能性があります。
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