“市民か戦力か”「ウクライナは非常に厳しいジレンマに」東部の戦況は・・・専門家に聞く(2022年5月30日)

ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア侵攻後初めて、北東部ハルキウを訪問し、兵士を鼓舞しました。

ウクライナ東部の情勢について、アメリカのシンクタンクは、ロシア軍はルハンシク州のセベロドネツクで攻勢を強めていますが、ピークを迎えていて、ペースは鈍くなる可能性もあると指摘しています。

また、ロシア軍はルハンシク州とドネツク州の全体の掌握を狙っていましたが、現在はセベロドネツクにほぼ全戦力を集中していると分析しています。

ロシア国防省は、鉄道拠点がある要衝、ドネツク州リマンを制圧したと宣言しましたが、ウクライナは戦闘が継続しているとしています。

ヨーロッパの安全保障が専門の二松学舎大学・合六強准教授に聞きます。

(Q.ロシア軍がリマンを狙った理由は何ですか?)

合六強准教授:「リマンは交通の要衝であることに加え、今後の動きを考える時に非常に重要な拠点になります。2つの可能性があって、1つは、ロシア軍が陣地を広げているとみられるポパスナと、リマン双方から包囲する形でウクライナ軍を壊滅させる狙い。もう1つは、スロビャンスクとクラマトルシクをリマンから狙う可能性もあります。恐らく2つ目の方が可能性が高いと見ています。ドネツク州の中心的な都市であるスロビャンスク、クラマトルシクを抑えることで、今後、ドネツク州に攻勢をかけるときに重要な足がかりになります」

(Q.ロシア軍は東部での戦い方を変えましたか?)

合六強准教授:「ロシア軍の中でどういう変化があったのかはよく分かりません。ただ、これまで政治的な目的を優先させて軍を動かしている印象でしたが、現在はより軍が中心となって戦術を柔軟に組み替えて、取れるところから着実に領土を拡大していく動きに変わっていると思います。政治と軍の役割分担の調整が図られた可能性もあります」

(Q.ウクライナはセベロドネツクの窮地を打開することができますか?)

合六強准教授:「ウクライナにとって非常に厳しく、ジレンマの状況に置かれています。ウクライナ軍がこの地から後退すれば、セベロドネツクは落ち、残っているとみられる1万人以上の住民が、ブチャのような悲劇に見舞われる可能性は否定できません。一方で、市民を守るために軍をはり付けておけば、重要な戦力を失いかねません。ウクライナ側としては高い政治的判断が求められる可能性があります」

ロシア軍が全域の制圧を宣言している南部ヘルソン州では、ウクライナ軍が反撃を開始しているとされています。ウクライナメディアによりますと、ウクライナ軍が空軍や砲兵部隊の支援を受け、ロシア軍の防衛線から9キロの地点まで前進したということです。

(Q.東部劣勢のなか、ウクライナが南部で反撃した理由は何ですか?)

合六強准教授:「軍事的・政治的2つの側面があると思います。軍事的な面では、東部ルハンシク州での戦況が厳しいなか、裏をかくという意味で南部を反攻させる。これが限定的だったとしても、ロシア側はこちらに意識を向けざるを得ず、戦力を分散させたい狙いがあると思います。政治的な面では、ロシア軍に制圧されたヘルソン州では、インチキな住民投票を行って、ヘルソン人民共和国を一方的に宣言するのではないか、ロシアに強制的に併合するのではないかという見方も出ています。この既成事実化、ロシア化が進む前にこの地域を不安定化させてロシアの試みを防ぎたい狙いもあると思います」

(Q.ロシア国内では、志願兵の年齢上限を撤廃する法案が可決されました。こうした動きから何が言えますか?)

合六強准教授:「ウクライナ東部ではロシア有利に傾きつつありますが、全体の戦況でロシアが圧倒的有利とは言えない現状を反映していて、明らかに長期的な戦闘を見据えたうえでの動きだと思います。思い返せば、ウクライナ東部での戦闘は2014年4月のクリミア侵攻から始まっていて、ミンスク合意が最終的に妥結されたのは2015年2月と10カ月かかっています。現時点で3カ月ということで、まだまだ序盤戦の可能性があります。ウクライナとしては今後、ゼレンスキー大統領が一貫して言っているように、2月24日までのラインに戻したい。一方、プーチン大統領は政治的に退ける状況にはありません。双方が折り合わないなかで戦闘は今後も継続していく可能性が高いと思います」

(Q.トルコのエルドアン大統領は、ロシア・ウクライナ両大統領と電話会談を行い、双方の話し合いを呼び掛けるとしています。これで進展する可能性はありますか?)

合六強准教授:「残念ながら可能性は低いと思います。戦闘がこう着状態にあるなかで、建設的に停戦協議ができる状況にないと思います」
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