「ウクライナの運命が決まりそうだ」東部“天王山”の戦い 今後の戦況は・・・専門家解説(2022年5月25日)

ウクライナ東部ルハンシク州にあるセベロドネツクはここ数日、ロシア軍から集中的に攻撃を受けています。

いつ砲弾が飛んでくるか分からない状況のなかで、避難が続けられています。

人道支援団体:「街は事実上包囲され、戦車や軍用トラックが配備されていて、陥落寸前です」

市民:「私の国が死につつあります。とてもつらいです。心配です」

電気もガスもありません。それでもなお街に残る人、残らざるを得ない人がいます。

市民:「向こうの家は、砲弾が寝室に飛んできて全壊しました。たぶん燃えてしまったと思う」

イギリスの国防省は、ロシアがこの街を占領すれば、ルハンシク州全体が支配下に置かれることになるとみています。

ウクライナ国防省、モツヤニク報道官:「最前線の状況は極めて困難で、ウクライナの運命が決まりそうだ」

包囲されつつある街。ロシア軍はその先で何を狙うのでしょうか。

◆ロシアの軍事・安全保障政策が専門の小泉悠さんに聞きます。

(Q.ロシア軍がセベロドネツクを狙う理由は何ですか)

小泉悠さん:「ルハンシク州の大部分は、ロシア軍の占領下に入っていて、主要都市はセベロドネツクしか残っていません。今、セベロドネツクがルハンシク州の暫定州都となっていて、ここを落とせれば、ロシアは『ルハンシク州を完全にした』と言えます。ロシアは、ルハンシク州・ドネツク州を合わせたドンバス地方で、ロシア系住民が迫害されているから助けに行くための作戦だといって始めています。セベロドネツクが落ちるということは、ロシアからすると『ドンバス解放の第一歩だ』といえます」

東部での戦いは、どちらが戦力的に優位なのでしょうか。オランダの軍事情報サイトの集計によりますと、ウクライナ・ロシア双方が失った兵器の数は、戦車や航空機、艦艇などの損害を合計すると、ウクライナ軍が1077、ロシア軍が4055としていて、ロシアの方が4倍近く失っている計算になります。

(Q.ロシア軍の方が損害が大きいように見えますが、どう考えますか)

小泉悠さん:「まず、この数字は映像で確認されたものだけです。ウクライナ国民が映像に上げたくなるのは、やられているロシア軍の方だと思います。そのため、ロシア軍は少なくともこのくらいやられているのは明らかですが、ウクライナ軍がもう少しやられているのではないかと疑問です。ロシア軍の戦車は全部で3000両しかないはずですから、そのうち700両やられているのはとんでもない損害です。いずれにしても、お互いものすごい損害を被ってふらふらで、どちらが先に決定打をくらわすのかという勝負になっていると思います。ドンバス地方東部の辺りでは、ウクライナ・ロシア両軍の主力部隊が集まって戦っているので、ここの戦闘で勝った方が当面の間、相手を好きなようにできる状況になる可能性が高いと思います。だからお互い力を入れているし、運命を決するとも言われ、ある種の“天王山”だと見ています」

(Q.戦況をどうみますか)

小泉悠さん:「やってみなければ分からないところはありますが、少なくとも先週くらいから、ロシア軍の攻勢が進んでいます。セベロドネツクの周辺に、かなりの数のウクライナ軍の主力部隊が閉じ込められているのではないかとみられています。彼らが包囲殲滅されるのか、包囲を突破して撤退できるのか。もう一つは、西側から入ってきている軍事援助をいかに早く戦力にできるのか。最後に、この夏にもウクライナ軍が反転攻勢に出たいのではないかと言われていますが、それができるのか。それともロシア軍に押し切られるのか。このあたりが大きなファクターになると思います」

(Q.ロシアの誤算続きと言われ、ウクライナ優勢という印象も受けましたが、必ずしもそうではないということですか)

小泉悠さん:「お互いの軍隊が死力を尽くして戦っています。先週ぐらいからのロシア軍は、かなり軍事的なセオリーにのっとって戦争ができている感じがします。そうなると、戦争が始まる前に恐れられていた、ロシア軍の本来の強さ、火力を生かした戦闘ができることを考えると、まだまだ楽観はできないと思います」
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