スウェーデン“収束”の理由は・・・現地医師に聞く(2020年8月27日)

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ヨーロッパでは、多くの国が3月や4月に大規模なロックダウンに踏み切り、いったんは流行を食い止めたものの、再び感染が拡大しています。そんななか、憲法上の制約もあり、感染拡大のピーク時にも厳しいロックダウンを行わなかったスウェーデンでは、今のところ感染の再拡大は見られません。

スウェーデンでは、80歳以上の重症患者はICU=集中治療室に入れないなどの規定があったり、介護施設の脆弱な医療体制が原因で、一時は高齢者を中心に死者数が激増した時期もありました。しかし、現在、一日当たりの感染者数は数百人規模で推移していて、グラフの曲線を見る限り、第二波は来ていません。

ウイルスは1人が感染したら、次々と伝播していきますが、免疫のある人がいれば、ウイルスの攻撃を跳ね返し、感染拡大を防ぐことができます。この免疫を約40~60%の人が持ち、流行が収まっていくのが集団免疫です。スウェーデンは、この集団免疫を獲得した可能性があるとされています。スウェーデン独自の対策を主導してきたのは、政府疫学責任者のアンデシュ・テグネル博士です。
アンデシュ・テグネル博士:「ロックダウンをせずに感染拡大に対処するために大事な対策は、PCR検査を受けやすくすることや、持続可能な対策を取ることが重要。長期的に維持できる対策を実施することが必要な理由は、新型コロナウイルスはすぐに消えることがないから。スウェーデンは同じ対策・指針・規制を長期間、維持してきた。背景に国民からの高い信頼があることも、欠かせない要素」

ロックダウンしなかったことで、高齢者約6000人が亡くなりました。
アンデシュ・テグネル博士:「私たちが意図的に高齢者を犠牲にしていることは全くない。残念ながら、感染拡大当初は、多くの長期介護施設で準備・必要な人員・感染対策が足りていなかった。極めて残念なことで、今後、教訓となるだろう。今後の展開について、誰も自信を持って予測できない。ただ、現在のように感染者を低く抑えたまま今秋を乗り切れれば、それなりに自信を持って『感染拡大の大波は確認されなかった』と言えるだろう」

◆スウェーデンの新型コロナウイルス治療の拠点、カロリンスカ大学病院に勤務する日本人医師・宮川絢子さんに聞きます。
4月に入って死者数が増え始め、21日には一日で185人が亡くなりました。その後は、徐々に減少に転じ、8月に入ってからはほぼ一桁台、感染者ゼロの日もあります。
※4月の病院の様子、現在について
宮川さん:「私の病院では、4月のピーク時は入院患者が500人近くいて、このうちICUに150人ほどがいて、通常業務は縮小されました。それからは徐々に減って、今は、入院している患者は15人くらいで、ICUにも数名程度です。スウェーデンでは、病院同士の横のつながりが非常に密で、どの病院がコロナを治療するか、どの病院がコロナ以外を治療するかというのが決まっていますので、患者を振り分けていました。現在は、通常診療に戻っています」

※ロックダウンをせず、経済活動にも大幅な制限をかけなかったスウェーデンのやり方について
宮川さん:「公衆衛生機関のテグネル氏によると、ロックダウンにはエビデンスがないこと。長期に持続可能な政策ではないこと。憲法において国民の移動に制限をかけられないこと。子どもたちの教育を受ける権利を奪わないことなどの理由で、ロックダウンは行われませんでした。でも、実際にはソーシャルディスタンスやリモートワークなど、行動に制限はありました。スウェーデンのGDPは、半分近くが輸出で、外需が冷え込めばGDPが落ちるのは当たり前で、内需も当然、落ち込んでいます。やはり、無傷ではいられないというのは、それは当たり前のことだと思います。パンデミックがあっても、政策は変わることなく、同じことを国民はしてきて、ここに至って収束しているということで、国民に大きな安心感があったと思います」

※日本の対策について
宮川さん:「日本もスウェーデンも部分的ロックダウンという意味では似ていると思いますが、人口あたりの死者数がスウェーデンのほうが2桁多いので、日本の政策は成功していると、こちらからは見えます。しかし、日本の国民が不安だという報道を見ると、死者の多いスウェーデンよりも少ない日本のほうが心配しているのが、どうしてなのかなと感じます」

※スウェーデンと日本の違いについて
宮川さん:「スウェーデンでは、徹底した情報の透明性が、ずっと存在している。また、トップのブレないリーダーシップが常にあります。新型コロナウイルスは、これまでに経験のないパンデミックを引き起こしましたが、ウイルスに関しても、まだわかっていないことが多い。つまり、政策についても何が正解かわからない状態です。そういったときに、一つのことを決めてブレずに、中央がリーダーシップを発揮することは、国民にとって大事なことだと思います。それを行う前提として、持っている情報をすべて開示する。スウェーデンでは、パンデミックのときは、毎日、午後2時に公衆衛生庁をはじめ、関係省庁の代表者が記者会見を行い、データを示し、時間無制限で記者の質問を受けていました。
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